姥石様

姥石様 渡瀬

 渡瀬の南のはずれ、いこい食堂の前から県道を斜め右に折れ、かんな旅館の先まで行く道があります。この道が河原にはいる直前の左側崖の上に、「姥石(うばいし)様」と呼ばれている黒い石があります。三波石の四十八石のひとつに数えられているこの姥石様は、昔から咳を治してくれると伝えられています。

 ゼンソク、百日咳などで苦しむ人が、煎った豆を供えて願をかけたものだそうです。

 昔は、このような信仰が広く行われていたようで、「日本の伝説」(柳田国男著)という本には、似たような話が沢山載っています。それによると、咳を止めてくれる姥石あるいは姥神様は、村はずれの水のほとりにあることが多く、「咳」は「関」の字だったのではないか、関は、せき止めるの意味で、道祖神と同じく邪悪が村に入ってこないよう、村はずれに祀ったものが、いつしか忘れられ、セキという言葉から、咳の病ばかり祈るようになったのだろうということです。

 供物として、麦こがしなど咳込み易いものを上げるのはそれを食べて咳の苦しさを知ってもらい、早く治してもらおうという、昔の人の知恵だったようです。

 この姥石のように、昔広く行われていた素朴な信仰のなごりが、この村にも残っていることを思うと、歴史も身近に感じられます。

姥石様の水墨画
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